これは ひどい

KBS京都 Canvas2 〜虹色のスケッチ〜

最終話「虹色のフィナーレ」

最後の最後ですべて台無し。
ここまで全体としては悪くなかったはずなのに。


最終話なのだからこれまでの積み立てを生かすべきであり、逆にこの終わりにしたかったなら相応の積み立てをしておくべきだったと思う。最終話前半まで霧と懇ろにする気全開だった主人公がいきなりエリスに走るのは超展開にしか見えなかった。
確かに「自分の気持ちに嘘をついてる」とか「素直になれなくて後悔する」などといった台詞を投げかけられていたのだが、主人公が霧しか見てないことに絶望して諦めるまでエリスは「お兄ちゃんが好き」と最初からずっと言い続けていたし、主人公に至っては絵のことはさておきエリスに対する「素直な気持ち」とやらがこれまでの話で全然描写されてない
妹同然のエリスゆえ気にかけてはいたもののそれは霧への対抗心に戸惑うかトラウマを心配する描写がほとんどで、エリスが橋爪君に告白されたのを見て不機嫌にさえならないし、“ふとしたときに見せる女性らしさ”に焦るような描写も絶無とは言わないまでも判別が難しいくらい薄い。過去の様々な回想シーンにしたってエリスが主人公を求める理由にはなっても、主人公がエリスを求める理由になるものはほとんど提示されていない。他方で主人公が霧に惹かれていたことはかなり読み取りやすい。
終盤でさえ霧との同棲生活の日常を画像入りで妄想して散々にやけたあと思い出したように「しかしそうなったらエリスはどうするんだろう」と呟くだけの主人公は、エリスにそういった感情を持っていたとしてもせいぜい潜在意識レベルとしか思えない。
最後の最後で一発逆転という話自体は恋愛ものの定番かつ王道であり悪いものではないが下地無しに一部分だけ模倣されても困る。やっと本当の気持ちに気付いたといえば聞こえはいいものの、視聴者からすれば存在するかどうかも怪しかったものがこれまでのストーリーの大部分を使って描写された霧への想いより強いと言われても置いてけぼり感しか残らない。


このまま霧一直線でも締まりが無かったけど、元々のバランスが悪いからといって反対側を無理矢理押しても逆方向にひっくり返って悪化するだけという見本のような近年稀に見る酷い最終回だった。ここまでの本編はそこまで悪くはなかっただけに最終回としての落ちかたはある意味デス種以上。
そして落ちるところまで落ちた最終回にさらなる追い打ちをかける事態が発生。最後エリスと主人公が抱き合い(一応は)大団円を迎えた空港内から、先にエリスの「さようならは言わないよ。また絶対会おうね。」という言葉とともに送り出され既に離陸した機内から窓の外をみつめる藤浪へと場面が移る。

『さようなら、エリスちゃん。』
呟き、手を口に当てる(おそらく薬を含む)藤浪。
頼まれていたと思しきフライトアテンダントがきて「お客様、お水をお持ちしました。」と声をかけても目を閉じたまま動かない藤浪。
『さようなら……病院のお兄ちゃん。
ノローグとともに藤浪の手が膝から落ちる。
<画面暗転>
NA NA NA... 涙色〜(ED曲突入)

…え?死んだの?
確かに病弱という設定はあったけど初登場の6話で病みがちだった理由として出てきた以外ではエリスの入院までほとんど触れられていなかったし最近でも「決心して手術を受けることにした」以外の情報無かったし何より話の本筋にあまり絡んでなかった藤浪が最後の最後にいきなり死ぬ理由が分からないというか無いだろどう見ても、と思ってたらEDのこれまた一番最後に病院で目を醒ますシーンが何のフォローも無く挿入されていた。
よりによって一番最後で無意味に紛らわしい演出するなよ!!!
この描写については本気でスタッフに演出意図を半日ほどかけてでも問い詰めたい。主人公と抱き合うエリスよりあとの本編最後の場面がこれというのはもはやギャグでやってるとしか思えなかった。
それから「病院のお兄ちゃん」って主人公との過去フラグなのだろうけど藤浪登場の6話以降アニメ本編でそれを示す描写といえば22話でエリスに言った「(病院をたらい回しにされてた頃)北海道の病院にも入院してたことあるしね。」という一言くらいしかない。実は2話の時点で主人公に関するエリスの回想の中に小さい頃の藤浪と主人公が喋ってる場面はあるのだけど当然この時点で藤浪はまだ本編に出てきておらず、元のWindows版にいなかったし新キャラとして登場するPS2*1発売はアニメも半分以上終わっていた頃なので予備知識などあるわけもなく(まあコミック版はどうか知らないけど)色が淡い上たった1カットだけさらっと流されたシーンで「またスケッチブック持ってる。見せて見せてー!」と言ってた女の子がOP動画にいる藤浪と同一人物だというのはさすがに録画して後で観直しでもしないと分からない。こんな前フリでさえ隠し要素レベルに見つけにくくて肝心の中身はPS2版をプレイしてないと知りようがない想い出を、この最後の場面に意味不明な演出つきで持ち出すのはもう根本的に何かが壊れているとしか思えなかった。


やはり時々出てくる紗綾先生アイキャッチこそがこの番組の本体でありストーリー部分はおまけだということなのかしら。


*1:あと部長の竹内もWindows版では立ち絵すら無い非攻略キャラだった。