2005年回顧録1

年末ということで、今年プレイした主なゲームについて振り返る企画第一弾。
以後続くかどうかはさておき時系列の順ということで。

羽くんの憂鬱(ACTRESS)

先日解散したACTRESSが年初に出した姉ゲー。姉寄りゲームの多いACTRESSだが、はっきり姉ゲーとしてリリースされたのは「チェリーボーイにくびったけ」以来のような気がする。
そういえばこのゲームは当初OHPの紹介ページでヒロインが実姉・実母であることが言明されていたのだけれど、発売前のある時いきなりプロローグやキャラ紹介の「姉」とか主人公を産んだとかいう記述が修正されるという事件があった。その頃は丁度「ALMA 〜ずっとそばに…〜 Complete Edition」において実妹十崎由衣と最後までやっていた*1という衝撃が駆け抜けた後であり、近親で引っかかったにしても不可解である。修正の痕跡を思い切り残していたあたりネタだったのかしら。
そして本編はというとそんな修正の記憶などどこ吹く風で開始早々実母であることなどが言明されていた。しかし実でもママン以外では全くといっていいほど生かされておらず、背徳性さえほとんど皆無なのでどちらにしてもあまり意味は無かった。


このゲームの感想は、「体験版用ダイジェストカットだと思っていた三女ルートが本編でも全く同じだった。」という一言に集約される。


実設定を生かすとかいう以前の問題として、あまりにもシナリオの中身が無さ過ぎる。まあ「 ア ク ト レ ス だ か ら 」と思えば多少納得できない事も無いが、あれだけ「姉萌え」を煽っていた結果がこれというのは度し難い。
次女ルートでは主人公が姉の歯磨き用コップを間違えて使ったとかいう恐ろしくくだらない内容の揉め事を二日も三日も引っ張ることにかなり辟易し、年上全般に死ぬほど弱い吾輩でさえあまりに中身が薄すぎて困惑してしまった。
さらに困った事には姉姉姉母という姉漬け生活なのに丼が絶無。各ルートにおいて別の姉に浮気することはあるが、本当に丼は一つも無い。それどころかママンルートさえ無い。法子ママンは各姉のルートで特定フラグを立てるとイベントが起きるだけで個別ED無し。丼系に関してはまああっても微妙というか3人4人とかになるともう訳が分からない構成になることが殆どだけど姉漬け生活の描写として二人までは押さえておくべきだし、ママンEDが無いとかはもう(略)
羽くん以上にプレイヤーの方が憂鬱になるゲームであるorz
姉ゲーとしては同じアクトレスでも「チェリーボーイにくびったけ」の方が遥かに良いと思う。


以下各キャラについて

  • 如月みゆき つるぺたではないが極めて小さい長女。甘々なキャラは悪くない。
  • 如月あすか 次女。多分ツンデレなのだろう。くだらない事を根に持ちすぎ。
  • 如月えり 三女。上二人に属性を確保されているため位置が微妙。
  • 如月法子 母。このゲームの中では一押しだが、イベント発生条件が分かり辛いうえに個別EDが無いのは痛い。


処女はお姉さまに恋してるキャラメルBOX

基本は昔からある女装潜入モノだが、マリみてブームのインフレに丁度良い具合で乗った感もあり、それこそメーカーが売れ行きを読み切れなかったくらいヒットしたキャラメルBOXのゲーム。
吾輩は特典買い分の代講を頼まれていたのでとりあえずソフト本体のみ接収してプレイ。


このゲームを一言で言い表すなら、百合の皮を被った意外なほど普通の萌えゲー
美智子さんや緋紗子先生の絡みでおまけ程度の百合描写はあるが、本編は女の子の中に「お姉さまという設定と格好を背負わされた男の子」がいるというだけ。基本的に女装やエルダーとかいったものは話を動かすための装置であり、「エルダーのお姉さま」という憧れの存在としての設定も中身はぶっちゃけ新沢靖臣とか有坂未空の無駄にモテまくるという半分ギャグな描写とほとんど変わらないレベルで、元々モブ以外の男キャラがほとんど出てこないゲームが多い中さしたる違和感を感じる事もなかった。


主人公にしても時折雰囲気に流されてお姉さま的行為に及んでは自分でがっくりきているのが面白いくらいで、客引きにブームを利用した百合っぽい味付けを振るいつつも最終的な主軸は「実はオトコノコ」の主人公というカタルシスに帰結する。そもそも万能完璧超人という前提条件とともに男の子という完全に浮いた存在だったからこそ畏敬でエルダーに選ばれたとしか思えないし、主人公の行動原理もシナリオの核心もひたすら男の子的文法に終始していることからもそういう風に作られているようにしか見えなかった。主人公がお姉さまという設定は完全に「いつもの萌えゲー」の表層を滑ってビジュアルに貢献しているだけである。ビジュアルはえろげにとって非常に大事なので悪いとは思わないが、完成度ではるかに劣っていても「お嬢様組曲」の潔さの方が吾輩は好ましく思うのだ。
こういう作り方になっているのは客引きとして中身をまず見てもらうためなのか、それとも昨今のマリみてブーム自体が所詮男視点のものに過ぎないという解釈からなのか、という疑念は残るがえろげの舞台にこういう飾り付けをしてみるのも面白いし、吾輩は体験版でその萌えゲーとしてよく出来ていると思ったから買った(正確には代わりに買ったあと特典だけ送って差額分としてこちらから別の代講を頼んだのだが)わけで前述の通り出来としてはかなり良いと思う。


以下各キャラについて

  • 十条紫苑 年上のお姉さま。黒のロングで屋上にいたり思考を読んだりするのでなにげに「夏恋-Karen-」の香西綾を思い出す。
  • 厳島貴子 一押しの会長。ツンデレラという割にツンがかなり弱いけど。
  • 御門まりや 幼馴染なのにゲーム中では一番ワリを喰ってるような気がする。
  • 周防院奏 ちびっこA。それ以外の印象は残ってない。
  • 上岡由佳里 由佳里という魂に響く名前以外はどうでもいい。(何)
  • 梶浦緋紗子 居ても居なくてもあまり変わらない。年上なのに微妙。
  • 高根美智子 普通に拘る人は普通でないという見本なあたり、ツインズラプソディの菅原里紗を髣髴とさせる。
  • 小鳥遊圭 ネタ担当でイメージの通りの受けの人。しかしおまけ2は蛇足な感が残る。
  • 菅原君枝・高島一子 そういえばそんなのもいたっけ。
  • 宮小路瑞穂 外見はともかく中身が完全に男の子なので萌えない。

どうにもこの瑞穂きゅん萌えというのは吾輩にはよく分からない点なのだけど、人気投票とかを見る限りでもそれがこのゲームの人気の中でも大きなウェイトを占めているようで、ある意味萌えゲーとしての評価で良いと考える吾輩のほうが異端であり人気の本筋は百合でもヒロインでもなく主人公なのやも。なにしろそのような層が抱き枕カバーを一時間完売に追い込むほどいるというのだから恐ろしい。


そして最後に、やはりどうしても不満が残るのは体験版にもあるプールイベント。
どういう方向で作ったにしても「男だと知られる危険」と、これをいかに避けて怪しまれずに通すかというのは女子校潜入ドタバタものの舞台の核心というかもはや根幹にあたる部分である。それは最終的な露見イベントに関わる流れの土台となる。発生する衝撃はある意味でその場面自体よりそれまでの隠蔽状態に依存するともいえる。
なのに、そこにあってプールの解決がこの憑依イベントというのは不可解である。確かにこれならば疑われず解決するが、代わりにそこで全てが終わってしまう
ここで、これにだけ超常現象を出されたら誰にも疑いようが無い。女性であることは誰の目にも明らかだ。以後どんなに怪しくても瑞穂お姉さまが男だなんて疑う人は居なくなるだろう。
しかしそれでは、瑞穂が男だと知ってしまった×××がそれを公表したとして、誰も信じないし、知った本人もまず過去の記憶との整合性に苦しむはずだ。元々が無茶な話なのだから多少強引な設定・手段をとるのはいいとしても、そこで明白な、通常疑義を差し挟むことも不可能なレベルの確証を与えてしまうというのは土台の破壊ではなかろうか?
推理もので後になって前提情報の致命的誤りとか超能力とか未知の宇宙生物とかを出されるのと同じようなもので、女装潜入モノにおいてこの部分で横車を押すのだけはどうにも納得できなかった。


*1:元のバージョンでも由衣ルートはあったものの、その頃から実妹と明記されており寸止めまでで直接描写は無かった。