スーツケースの謎

MBS CLANNAD

第14回「Theory of Everything」

……の本筋とはあまり関係ないのだけど、今回出てきたスーツケースの経緯があまりに不可解で気になりまくったので書いてみる。


吾輩は原作やったことないが、ことみのストーリーの中核だし京アニのやることだからきっと原作でも同じなのだろう。多分。
とりあえずネタバレ全開で書くと、今回登場したスーツケースはことみの両親が飛行機事故で亡くなった際にことみへのプレゼントのぬいぐるみとことみへの手紙を入れて、ことみに届けてくれと書き添えて残したものらしい。

1.このスーツケースの中身はいつ完成したのか

「飛行機事故」が具体的にどんな状況だったのかよくわからないが、墜落が予見できる絶望的な状況でかつ手紙を書けるくらいには機内が安定している状態というのがまず想像できない。
ぬいぐるみが手元にあったのは送る間もなく持ち込んだからで、手紙自体は一緒に送るつもりだったから既に書き終わっていたということならことみに届けてくれというメッセージのみ走り書きすることは無理とはいえない。

2.飛行機の中にあったスーツケースがどうやって外に出たか

そもそも事故とは何だったのかが大きく関わる。
飛行機が落ちてそのまま沈んだら中のスーツケースも一緒に沈む。「突然爆発して放り出された」はスーツケースの中身を構築する時間と理由が無くなるのでありえない。「着水時に機体が崩壊して死亡したがスーツケースだけは無事に外へ出て流れていった」なら辻褄は合うか。飛行機が壊れる衝撃でありながらあのサイズのスーツケースが無事というのは難しいと思うけど偶然が起きることを否定する気はない。
あと「着水」→「脱出」→「絶望した!」だとすると混乱する機内からスーツケース持って出られる程度には安定しているという前提なら、中でスーツケースを用意してから持って出ることは可能だと思う。この場合、メッセージを添えたスーツケースを用意している時点で覚悟して機外に出ていたということになる。当然ライフジャケットなんかも装備しているはずだが救助が間に合わなかったと。救助活動をちゃんとがんばってくれと思うが、まあ状況にもよるだろう。

3.スーツケースがどうやって海岸まで流れ着いたのか

中身が長時間水に晒されてたらぬいぐるみがとんでもないことになるし手紙もまず原形をとどめていないはず。スーツケースの機密性が高いことは前提であろう。高名な研究者なら高級品を持っていてもおかしくないし。
中身がぬいぐるみと手紙だけで比重が軽かったなら時間をかければ不可能でない気はする。

4.スーツケースが「さまざまな国の人から人へ」託されてきたというのはなぜか

結局のところこれが最大の疑問点。
おっさんが「昨夜遅く研究所に届いた」と言ってるので、流され始めてから朋也が過去の出来事を忘れてことみが高校生(だっけ?)になるほどの時間がかかったことになる。
そしてこれについて海岸に流れ着いて発見されるまでに時間がかかっただけでなく、そこから研究所へ届くまでに山や砂漠を越えて幾人もの手を経て長い歳月がかかったのだろう、という推測まで述べられている。
しかしその鞄が手入れされつつ届く程度に安全性が保持されている環境にあって、それも最終的に日本の研究所に届くくらいの情報量があるのならば、人の手を渡って山を越えたりする必要は無いのではなかろうか。
間に善意の人を何人も噛んで何カ国も渡るくらいなら「日本大使館へGO」で済む。大航海時代じゃあるまいし、発端からして「飛行機事故」なのだから飛行機でとっとと日本へ届ければいい。
というか普通なら、そうするかそれに近いことをすると思う。であるにもかかわらず「人から人へ託されてきた」という推論にたどり着いたということは、彼らにそういう経緯があったことを思わせる何かがあったということであろう。
しかし大航海時代ならぬ現代において、無闇に人に渡す=人に任せるというのはむしろ無責任であってあまり善意とはいえない気がする。拾った人が責任をもって届けろとは言わないが、結局また別の人に渡さざるをえないような相手に押し付けるのがいいことだとは思えない。


もしそこにそうせざるを得ない理由があって、そのうえで善意の人に支えられて届けられたのだとしたらそれはいい話であろうと思うのだけど、その肝心な部分が明らかにならないこの状態で「人から人へ託されてきた」という結論だけを見せられると「いい話」だと解釈することができないまま「たらい回し」という要因だけ認識することになるため非常にすわりが悪く、どうにもすっきりしなかった。